2025/09/09
東京でホオノキを見てみたい人向けのおすすめスポット
東京でホオノキを観察できる4つのスポットを実地調査。六義園、大手町ビルの森、高尾山、小石川植物園の特徴と開花時期を詳しく解説。
ホオノキの堂々とした樹形と圧倒的な存在感、手のひらほどもある大きな葉、そして初夏に咲く芳香豊かな白い花を間近で体験してみたい——そんな方のために、東京都内でホオノキに出会える場所を実際に訪れて調査しました。都心部から自然豊かな山間部まで、それぞれ異なる魅力を持つ4つのスポットをご紹介します。
実際に訪れた4つのスポット
今回調査したのは、六義園、大手町ビルの森、高尾山、小石川植物園の4か所です。
まずは、一番最近に行ってきた六義園からご紹介します。
六義園(最もおすすめ)
六義園は東京都文京区にある江戸時代初期の回遊式築山泉水庭園で、国の特別名勝に指定されています。アクセスは駒込駅から徒歩8分、千石駅からも徒歩12分で、東京駅から30分以内で訪れることができます。
入園料:300円
六義園の風景。ビルが見えないように植栽する工夫も東京じゃ難しい
六義園は今回訪れた中で最も充実したホオノキ観察ができる場所でした。園内には大小さまざまなサイズのホオノキが数本植えられており、樹齢の異なる個体を比較観察できる貴重な環境となっています。
9月上旬の訪問時、花期は既に終わっていましたが、枝先に残るつぼみの痕跡や実の付き方から、この園のホオノキが確実に開花していることが確認できました。花期である5月から6月に再訪すれば、あの独特な甘い香りとともに大輪の白い花を楽しめるでしょう。
六義園の中では確認できた中で2箇所でホオノキを見ることができました。
蛛の道のホオノキ
一本目は六義園の最高峰、藤代峠の裏の蛛道のそばに2本ありました。
比較的若くて細いホオノキ
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蛛道(さゝがにのみち)
我がせこが来べき宵なりささがにの
蜘蛛のふるまひかねてしるしも衣通姫 『古今和歌集』
蜘蛛(=ささがに)の糸のように細いということから、この道の名として用いられました。和歌を泳んだ衣通地は日本書紀の中で、「美しさがその衣を通して輝く女性」として描かれています。また、紀州(和歌山県)和歌の浦の玉津島神社に祀られる玉津島姫になぞらえられ、和歌三神(和歌の道を守護する三柱の神:柿本人麻呂、山部赤人、衣通姫)の一人とされます。蜘蛛の糸が細くとも長く切れないことから、和歌の道も柳澤家も永遠に続くことへの願いも込められています。
六義園看板より引用
花が咲いたあとの未熟な果実
蜘蛛の道から間近で観察できる
雄大な株立ホオノキ
もう一本は千鳥橋を渡ってから吹上茶屋に向かう途中のトイレの手前にあります。
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大きいホオノキ、笹に囲まれていてこれ以上は近づけない
株立ちの一本一本の幹がとても太い。樹齢は何年だろう?
見上げるとさまざまな樹種の中でもわかりやすい葉っぱで目立つ
庭園として整備された環境のため、樹木との距離が適度に保たれており、幹の質感や葉の付き方をじっくり観察するには理想的な条件が揃っています。
これほどまでに大きなホオノキが都心にあることに驚き
ホオノキ以外にも
ホオノキだけじゃなくて、同じモクレン科の別の木も一緒に見られるのも六義園ならでは
タイサンボク、大きい。葉の裏の金色が特徴。ホオノキは銀色。
タイサンボクの花後の果実。花が咲きすぎたので落ちたのでは?
大小さまざまなコブシが植えられていた中での大木の一本
六義園ならではの光景
ビルとホオノキ、東京ならではの光景
続いて、都心部でアクセスが最も良い大手町ビルの森をご紹介します。
大手町ビルの森(アクセス最良)
東京駅に隣接する大手町は、日本有数のビジネス街として知られています。こんなところにホオノキがあるの?って思う人も多いんじゃないでしょうか。
入園料:なし
都心の真ん中でホオノキに出会える貴重な場所です。JR東京駅から徒歩圏内という立地の良さ・いつでも行けるというアクセスは他に類を見ません。7月下旬の訪問時、残念ながら花は見ることができませんでしたが、ビル群に囲まれた人工的な環境の中でも、ホオノキ本来の威風堂々とした姿を確認できました。
ただし、都市部の制約として樹高が高く、葉の細部まで観察するには限界があります。また、周囲のビル群との対比で、自然本来の姿とは異なる印象を受ける点は否めません。それでも、都心で手軽にそしてたくましく育つホオノキと出会えるという価値は大きいです。
このホオノキは大手町のパークビルディングの裏側のホトリア広場です。
後に見えるビルには有楽町を牛耳る三菱地所の本社やアンダーソン・毛利・友常法律事務所も入ります。
コンクリート都市と環境の共生を目指したホトリア広場
大手町ビルの森(正式名称:ホトリア広場)は、皇居の二の丸雑木林を意識した在来種や地域種を主体に構成された約3,000㎡の環境共生型緑地です。皇居周辺に生息する生きものを誘致すべく、生きものの住みかになるような工夫が凝らされており、皇居を中心とする生態系ネットワーク(エコロジカルネットワーク)をつなげるための取り組みを継続的に実施しているようです。
このようなコンセプトから考えると、ホオノキも皇居周辺の在来種として、生態系の一部を構成する重要な樹種として植栽された可能性が高いです。ホオノキは南千島から九州に分布する日本自生の樹木であり、都市部における生物多様性保全の観点からも価値の高い樹種といえます。
この施設は一般社団法人いきもの共生事業推進協議会(ABINC)の「いきもの共生事業所認証」を受けており、2023年10月には環境省の「自然共生サイト」として初回の認定を受けています。
アクセス | 大手町パークビルディング | 三菱地所オフィス情報
厳しい環境で生き抜くホオノキ
そして、
このホオノキ、よく見てみると、
…
けっこう葉っぱが食べられているのがわかります
わかりやすいように赤く線を書いてみました
害虫にもやられまくりな環境のようでけっこう厳しいはず💦
こんなビルのそばでたくましく育っているホオノキは、将来東京で働く僕自身にとっても憩いであり、自分と重ねて力をもらう、そんな存在になる気がします
大手町パークビルディングとホオノキ
次に、最も自然な環境でホオノキを観察できる高尾山についてお話しします。
高尾山(最も自然な環境)
入園料:なし(交通費別途)
芽吹いたばかりのホオノキ
登山道沿いで最も自然に近い状態のホオノキを観察できます。4月の訪問時は新緑の季節で、他の樹木とともに芽吹く様子を目の当たりにできました。
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場所は下山道のいろはの森から深山橋周辺で多く見ることができました。
山中での発見は確かに難易度が高く、慣れていないと見落としがちですが、自然林の中で他の植物と共存するホオノキ本来の生態を理解するには最適な環境です。都市部では味わえない、森林全体の生態系の中でのホオノキの役割を感じ取ることができます。
小石川植物園
東京大学大学院理学系研究科附属植物園(小石川植物園)は、日本最古の植物園として1684年に設立された歴史ある施設です。文京区白山にあり、都営三田線白山駅から徒歩約10分、東京メトロ丸ノ内線茗荷谷駅から徒歩約15分でアクセスできます。
入園料:500円
園内には研究・教育目的で様々な植物が系統的に植栽されており、ホオノキも観察することができます。4月の訪問時は、ちょうど芽吹きの季節で、ホオノキの特徴的な大きな葉はまだ完全に開いておらず、これから展開する若葉の様子を観察することができました。
この標識がついている手前の細い木々がホオノキ
芽吹く前なのでちょっとおもしろくない
春の早い時期にホオノキを見ることで、あの印象的な大きな葉がどのように芽吹きから展開していくのかという成長過程を知ることができる貴重な機会でした。花期である5月から6月に再訪すれば、完全に展開した葉とともに開花も楽しめるでしょう。
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場所は小石川植物園の上の場所です。
サンギョクランも見ることができた
ちなみに、園内には僕も初めて知ったモクレン科の「サンギョクラン」があって、そういった珍しい植物も見ることができました。
サンギョクラン(三玉蘭、学名:Magnolia dealbata)は、ホオノキと同じモクレン科モクレン属に属する中国南部原産の常緑高木です。標高1,500~2,500mの山地に自生するらしいです。
葉はホオノキより非常に濃い緑で小さめ
日本では非常に珍しく、植物園でも限られた場所でしか見ることができません。葉はホオノキよりもやや小さいのが特徴です。花も中型で6月頃にクリーム色から淡い黄色の美しい花を咲かせます。
小石川植物園では、このような貴重な海外のモクレン科植物も収集・展示されており、ホオノキと比較観察することで、モクレン科植物の多様性を理解することができます。
その他のホオノキが見られる場所
今回詳しくご紹介した4か所以外にも、東京都内にはホオノキを観察できる場所がいくつかあります。
皇居外苑(北の丸公園)
花木園でホオノキを観察することができます。
ホオノキ|皇居外苑|国民公園|環境省
新宿御苑
5月頃にホオノキの花を観察することができます。
花も葉っぱもデカい!新宿御苑の【ホオノキ】の花と葉に包まれて癒される | 情熱庭園
井の頭自然文化園
幹回りが約450センチもあるホオノキがあり、文化園のシンボル的な巨木となっています。
動画で見るホオノキの開花、24時間 | 東京ズーネット
多摩森林科学園
森林総合研究所が管理する施設にもホオノキが植栽されています。
森林総合研究所 多摩森林科学園/ホオノキ
これらの場所についても、今後実際に訪問して詳細な観察記録を追加していく予定です。
また、これを見ると神田、大丸有、日比谷エリアの中ではホトリア広場が唯一のホオノキらしいです。
おわりに
東京都内でホオノキを観察したい方には、まず六義園をおすすめします。入園料はかかりますが、多様なサイズのホオノキを間近で観察でき、花期には芳香も楽しめる可能性が高いです。
手軽にアクセスしたい方は大手町ビルの森、より自然な環境での観察を望む方は高尾山、他の樹木も楽しみたい方は小石川植物園と、目的に応じて選択していただければと思います。
また、「他にもこんなところでホオノキを見つけたよ!」という方がいらっしゃいましたらご連絡をお待ちしています。
ホオノキの観察を通じて、都市部に残る貴重な自然との出会いを楽しんでいただけることを願っています。
※各施設の開園状況や樹木の配置は、小池百合子と三井不動産の管理方針の変更により予告なく変わる可能性があります。