2025/09/15
北白川天神で京都の名水を汲んできました
京都の記録的な猛暑日・熱帯夜に涼を求めて、北白川天神の清らかな湧き水を発見。地元の人に愛される煮沸不要の軟らかな名水スポットをご紹介します。
本当に暑い夏でした
本当に暑い夏でした。2024年の京都は、さらに記録的な暑さでした。猛暑日が60日、熱帯夜も60日という前代未聞の数字を記録し、日本の観測史上初めて両方の記録が60日に達した都市となりました。
よく、京都は暑い!と言われますが、最高気温だけでは目に見えない住んでいる人にしかわからない厳しさっていうのがこうして数字に顕れると納得ですね。
京都市は三方を山に囲まれた盆地で暑くなると言われていますが、地下には琵琶湖と同じくらいの「京の水瓶」がある、なんていう話はよく言われています。
そのせいで京都の冬は底冷えするといいますが、その水の比熱で夏の間は少しくらい冷やしてくれてもいいのでは? と猛暑の京都で疑問に思いながら過ごしていたほどです。
そんな折、北白川に引っ越してきて気になっていた場所があります。
ランニングのルートで毎回前を通る北白川天神宮。
北山の台杉が美しい参道
以前住んでいた銅駝地域のマンションでは地下水が出ていておいしい水が飲めたのですが、北白川ではそうはいきません。
受験生の時に京都に来て、水道で歯磨き時に口をゆすぐだけで気持ち悪くなりそうになるほど味があった琵琶湖疏水を思い出しながら、北白川天神においしい水が汲めるところがあったら良いなと思って調べてみると、古い記録が残っているのが確認できました。
2015年ごろの記事が多かったのでコロナ禍で多くが変化した京都のこともあり、不安な気持ちで北白川天神を訪れてみると、きれいな状態で維持されていました。
北白川天神という地元のご鎮守
北白川天神宮は飛鳥時代から約1200年の歴史を誇る古社で、北白川一体のご鎮守として地元の人に大切にされてきました。もともとは久保田(おそらく現・久保田町のあたり、京大と白川通りの間)の森に少彦名命を祀った「天使大明神」として創建され、室町時代中期に8代将軍足利義政が銀閣寺を造営した際、都の東北の鬼門にあたる現在の千古山に社殿を移したと伝えられています。
詳しい歴史はこちらを参照ください
境内には133段の石段があり、小高い山の上に本殿が鎮座しています。
本殿
参拝のために石段を登っていくと、途中で振り返ると北白川の街並みが一望できます。
この階段を登ると本殿がある山上に着く。いつでも静かな雰囲気がお気に入り
手水舎は石段のふもと、鳥居をくぐってすぐのところにあり、ここで清らかな地下水を汲むことができます。
きれいに管理された手水舎
実際に訪れてみると、神主さんが気さくに声をかけてくださいました。「この水は飲めるよ」とおっしゃって、京都でも1、2箇所しかないような煮沸せずに飲める水だと教えてくださいました。
ただし、安全のため数日間放置したお水は生では飲まないよう注意が必要とのこと。
お水を汲むところはきれいに管理されている
また、水を汲むところにはお金をいれるところがあるのでお気持ちをいれるようにしましょう。
水もただで飲めるわけではなく、管や手水舎、境内を管理してくださる方がいるからこその恵みなのです。
ありがとうございます。
毎日の水汲みが日課に
実際に汲んで飲んでみると、本当に癖のない軟水でした。
飲みやすくて、白川のきれいな砂利にろ過された地下水という感じがします。
毎朝のランニング中に立ち寄って水を汲むのが習慣になりましたが、出勤前の朝の時間帯にも、地元の方が水を汲みに来られる姿をよく見かけます。
24時間いつでも汲むことができますが、静かな住宅街にありますので、深夜早朝の利用は節度を持って行いたいものです。北白川校前のバス停から徒歩約5分、銀閣寺からも徒歩約15分ほどの距離にあり、アクセスも良好です。
神主さんとの会話はそれほど長いものではありませんでしたが、他にも水を求めて訪れる地元の方の存在に、この水への愛着と誇りを感じることができました。
地域の宝として大切に守られてきた水なのだということが、その一言からも伝わってきます。
白川にまたがる参道。春は桜が美しそう
京都各地に点在する名水たち
京都には北白川天神以外にも、素晴らしい名水スポットが点在しています。
いくつか簡単に紹介します。
梨木神社の「染井の水」 - 京都三名水の一つで現存する唯一の三名水。やわらかな軟水で茶やコーヒーを淹れるのに最適です。
下御霊神社の「御霊水」 - 江戸時代の旱魃の際、神主の夢のお告げで発見されたという逸話がある「感応水」の水脈。寺町通にあってアクセス良好。
銅駝水 - 二条大橋近くの繁華街にありながら、地域の自治連合会が維持管理する共同体の宝。リッツカールトンの裏側が見える。
錦天満宮の「錦の水」 - 地下30mから湧く年中17〜18度の水。錦市場が魚市場として発展したのもこの豊富な地下水があったから。
松井酒造の酒造用水 - 比叡山から流れ出た地下50mの軟水。日本酒「神蔵」として味わうことができます。京大生御用達のLIFEの真横。
自然の水を選ぶということ
最近はマイボトル運動が盛んで、プラスチックごみの削減が叫ばれています。ウォーターサーバーを導入する場所(特に京都市の公共のハコモノや大学内)も増えていますが、せっかく自然の美味しい水が身近にあるのなら、そちらを活用した方が環境にも優しいのでは?
こうした名水を実際に飲んでみると、その土地の歴史や文化、そして地域の人々の想いを感じることができます。ペットボトルの水を買うのも便利ですが、地域に根ざした水を味わうという体験は、また違った豊かさがあります。
水道をひねれば安全な水が出る現代ですが、こうした自然の恵みを大切にしていくことで、私たちの暮らしはもっと豊かになるのではないでしょうか。
北白川の近くを訪れる際は、ぜひこの名水を味わってみてください。
僕らが足繁く通っている理由がきっとわかるはずです。