2025/08/30
静岡にも朴葉餅があった!有東木発祥の素朴な味わいをJAじまんいちで発見
飛騨だけじゃない!静岡市有東木発祥の朴葉餅は柏餅の朴葉版。JAじまんいちで手軽に購入でき、よもぎ・ピンク色・つぶあんの3種類が楽しめます。
静岡で見つけた意外な郷土菓子「朴葉餅」
朴葉餅といえば岐阜県飛騨地方や長野県の飯田地方が有名ですが、実は静岡市にも朴葉餅の文化があることをご存知でしょうか。
静岡市北部図書館近くのJAじまんいちで、偶然この地域の朴葉餅を発見しました。
静岡の朴葉餅の特徴とは
飛騨の朴葉餅とは異なり、静岡の朴葉餅は柏餅の柏の葉を朴の葉に置き換えたような形状が特徴です。
どちらかというと長野県の朴葉餅に似ています。
見た目は馴染みのある和菓子でありながら、朴葉を使うことで独特の風情を演出しています。
朴葉文化の系譜と有東木の地理的背景
朴葉を使った和菓子の文化を紐解くと、興味深い地域性が見えてきます。関東以北ではカシワが使われるが、関西以西ではサルトリイバラの葉が使われ、奄美大島から沖縄ではゲットウ(月桃)の葉が使われているのが一般的な柏餅の地域差です。
サルトリイバラの柏餅@鹿児島
しかし、長野県下伊那南部では「標高が高くカシワ(ドングリの仲間)がないためホオノキをその代用とした」との記録があります。この点で静岡の有東木と興味深い共通点があります。
有東木地区は標高500〜600メートルほどの山間地に位置します。有東木は暖温帯の静岡の平地より3〜4度気温が低い環境となります。このような標高では、一般的に柏餅に使われるカシワやサルトリイバラの生育に適さない可能性があると思いました。
有東木地区にはきれいな清流があり、そういった環境を好むホオノキの葉という自然の恵みを活かした伝統的な知恵が息づいているはずです。下伊那南部と同様に、特殊な地理的条件によって朴葉を選択した可能性が高く、これが有東木独自の朴葉餅文化を生み出したのでしょう。
参考文献
朴葉餅の味わいと食感
実際に食べてみると、柏餅とよく似た味わいですが、餅の食感がややねっとりしているのが印象的でした。
おそらく、お餅を朴葉で包んだあとに蒸しているのでしょう。
原材料もシンプルです。ほもろこしというのが赤い色素のもとでしょうか?
朴葉の香りは思っていたほど強くなく、控えめで上品な風味が楽しめます。
食べたあとの葉っぱ、蒸したようなあとがある。主脈に毛が生えている
3つの味のバリエーション
静岡の朴葉餅には以下の3種類があります:
- よもぎ餅:緑色の餅によもぎの風味が効いた定番
- つぶあん:粒の食感が楽しめる昔ながらの味
- ピンク色:ほもろこし。なぜピンク色なんでしょうか
どれも150円という手頃な価格で、3個セットなら450円で購入できます。
ほもろこしについて
ほもろこしの正体
原材料表示の「ほもろこし」は、実は現在のトウモロコシとは別の古い雑穀「モロコシ(蜀黍)」のことです。赤褐色の実ができる穀物で、これがピンク色の朴葉餅の色素となっているようです。健康志向の高まりで見直されている古来の雑穀を使用している点も興味深いですね。オクシズの雑穀は奥が深いです。
購入情報について
実際に購入できる場所です。
JA静岡市 しづはた じまん市
今回私が購入したのは静岡市の免許センターや北部図書館の近くの「JAしずはたじまんいち」です。
アクセスと営業情報
JAしづはた じまんいち
- 住所: 〒421-2108 静岡県静岡市葵区下1458−32
- 営業時間: 9時00分~17時00分
- 6月から8月頃まで販売していることは確認済み
- 昼頃でも在庫があることが多い
朴葉は塩漬けして冷凍保存したものを使用していると思われ、夏の間は(おそらく週末には)安定して購入できるようです。
地元の方にとってはちょっと変わった和菓子として親しまれているのでしょう。
ほかにも静岡市には「ほくぶ じまんいち」「なんぶ じまんいち」「長田 じまんいち」の3箇所がありますが、そこで買うことができるのかは確認していません。
本場・有東木の「うつろぎ」でも味わえる
朴葉餅の製造場所である有東木には、うつろぎ運営委員会が運営する食堂「うつろぎ」があります。
今回、JAじまんいちで買ったものもこちらで製造・販売されているようです。
こちらでは朴葉餅だけでなく、わさび発祥の地らしく生わさびや手打ちそばも楽しめます。
うつろぎの基本情報
住所:静岡市葵区有東木280-1
電話番号:054-298-2900
営業時間:
- 3月〜11月:平日10:00〜15:00、土日祝9:00〜16:00
- 12月〜2月:平日10:00〜14:30、土日祝10:00〜15:00
定休日:火曜日、農繁期、お盆、年末年始
アクセス:JR静岡駅から安倍線で約75分、「有東木橋」バス停下車すぐ
わりと静岡の中でも奥の方に位置しています
静岡市公式サイトによると、5名以上での利用時は事前連絡が推奨されていますが、食事以外の用途であればおそらく大丈夫かと思います。
朴葉文化の広がりを感じて
今回、静岡の朴葉餅を通じて、日本各地に根付く朴葉を使った食文化の豊かさを実感できました。自分の地元にもこういった朴葉料理があるということは今まで知らなかったのでそれも驚きです。
飛騨とは異なるスタイルでありながら、朴葉という自然の恵みを活かした伝統的な知恵が息づいています。
静岡にお住まいの方や観光で訪れた際は、ぜひJAじまんいちで朴葉餅を手に取ってみてください。また、時間に余裕があれば有東木の「うつろぎ」まで足を延ばして、わさびの里の豊かな食文化を体験してみるのも素敵な発見になることでしょう。
僕もまだ行ったことがなく、いつも下の道を素通りしている場所ですがホオノキがたくさん生えている場所なんだと思います。
葉っぱは切られている。作り方が気になります
おわりに
郷土料理は、その土地の自然環境や歴史が生み出した貴重な文化遺産です。
静岡の朴葉餅も、有東木という山間地域の自然の恵みと人々の暮らしの知恵が結晶した一品といえるでしょう。ホオノキという全国各地に生えている植物が多様な形で使われていたり、遠く離れた場所で似たような形で使われている様子を見ると昔の人々の知恵と工夫が感じられます。
身近な場所で手軽に購入できる今だからこそ、こうした地域の味・伝統知を大切にしていきたいものです。