2025-01-15
ドローンで森林を3D測量する!DroneLinkからWebODMまで
森林ドローン測量の完全ガイド。DJI機種選びからDroneLinkでの自動飛行設定、最適な撮影パラメータまで実践的に解説。WebODMでの3Dモデル作成で従来の森林調査を劇的に効率化する方法を紹介します。
左下に僕の影が映る。田んぼと道路
従来数週間かかっていた森林調査が、たった数時間で完了する時代になった。
今回は、ドローンを使って森林の3Dモデルを作るためのドローンの選び方と、飛行アプリの選び方について紹介する。ドローンの技術の進歩は目覚ましく、10万円前後で高精度のデータを取ることも可能になった。また、ドローンの自動飛行アプリを使えば、複雑な操作技術はほとんど必要なく離着陸から飛行まですべてを自動で行うことも可能になる。
この記事では、森林測量に最適なドローン選びから実際の飛行設定、データ取得までの全工程を解説する。実際のモデルの作り方についてはドローンで撮った画像から森林の3Dモデル作成を参考にしてほしい。
森林ドローン測量とは
森林ドローン測量は、ドローンで森林を空中撮影し、その画像から3D地形モデルや樹木の詳細データを作成する技術である。従来の地上測量では数週間かかっていた作業が、数時間で完了できる。林業における木材量の算出、環境調査、災害後の被害状況把握などに活用されている。
複数の角度から撮影した写真を専用ソフトウェア(WebODM)で解析し、3次元的な位置関係を復元する「フォトグラメトリ(写真測量)」という技術を使用する。
複数のドローン画像からモデルにしたもののオルソ画像
必要な機材
ここからは実際に必要な機材やアプリ、手順について共有する。
ドローン選び
森林測量には以下の機種が推奨される。重要なのは、後述するDroneLinkアプリに対応していることだ。
- DJI Mini 3(10-15万円):軽量で法規制対応、小規模エリア向け
- DJI Air 2S(15-20万円):バランス型で高画質、中規模エリア向け
- DJI Mavic 3(30-50万円):最高画質で長時間飛行、大規模・高精度向け
DJI対応機種の最新リストで詳細を確認できる。
自動飛行アプリ
今回はDronelinkというアプリを使った。
DroneLinkの特徴
DroneLinkは2017年設立のアメリカ企業で、ドローン自動飛行アプリの老舗だ。事前にコンピュータで飛行ルートを設計し、ドローンが完全自動で撮影ミッションを実行する。
競合の Litchiと比較すると、DroneLinkは測量・マッピング専用機能が豊富で、地形追従飛行や高度な安全機能を備えている。森林測量では地形の起伏に対応する機能が重要なため、DroneLinkが適している。
DroneLinkのサイト
料金プラン
森林測量では地形追従機能(Terrain Follow)が必須のため、最低でもStarterプランが必要となる。
- Hobbyist: 月額$9.99(基本機能のみ)
- Starter: 月額$29.99(Terrain Follow機能付き)← 推奨
- Growth: 月額$99.99(高度な解析・レポート機能付き)
Growthは他にも、撮影時の最大速度など詳細にパラメーターをいじることができる。
データ処理環境
撮影したデータを3Dモデルに変換するため、WebODMというオープンソースソフトウェアを使用する。クラウド版(有料・簡単)とローカル版(無料・中スペックPC必要)がある。詳細は別記事「ドローンで撮った画像から森林の3Dモデル作成」で解説している。
ドローンに関する法的な準備
機材が分かったところで、次は法的な準備を確認しよう。
2022年12月から100g以上のドローンは機体登録と操縦ライセンスが義務化された。
必須手続き
- 機体登録:国土交通省のDIPSで登録(手数料900円〜)
- リモートID搭載:飛行中の機体識別情報を電波で発信
- ドローン保険への加入を強く推奨
森林上空は「第三者上空」に該当する可能性が高いため、事前の飛行許可申請も必要になることが多い。
撮影の実行手順
準備が整ったら、いよいよ実際の撮影手順に入る。
撮影の流れは以下の通りだ:
- フライトプランの作成
- ドローンの準備
- フライト
この後のデータの分析については別記事のWebODMで詳しく解説する。
フライトプランの作成
DroneLinkでミッションを作成する
Grid Pattern(格子状飛行)を基本とする。撮影エリアを碁盤の目状に区切って、規則正しく飛行する方法だ。
DroneLinkでは実際の撮影例を公開している:
これらを参考に、現地の地形や撮影目的に応じてカスタマイズする。
「Map」で作ってからパラメーターをいじる
左上の3Dボタンを押すと3Dでフライトプランが確認できる。地形に沿って飛ぶのがわかる
撮影パラメータ
僕のDronelinkで設定は以下の通り
- オーバーラップ:85%(前後の画像の重なり率)
- サイドラップ:80%(左右の画像の重なり率)
- 地上解像度:2.5cm以下
- 対地速度:5m/s
まずは機体を設定する。
Cameraから自分の使う機体をプルダウンより設定する
次に高度やパラメーターを変更する。
Overlapなどのパラメーターをいじる。
また、AltitudeのReferenceを"Terrain Follow"に変更する。そうしないと平地でない限りたいてい木にぶつかる。
Ground Sample Distanceが2.5cm/px< になっていることが確認できればOK.
それ以上だった場合は高度を下げるか、もっと性能のよいドローンを使ったほうがよい。
カメラの向きなどはデフォルトのままで問題ない
対地高度について
対地高度について少しだけ触れておく。
安全マージンは65m
高度は65m-100mの範囲で設定する。高い高度ほど広い範囲を一度に撮影できるので短時間で終わるが、その分解像度が下がる。
最低高度を65mとするのは日本で最も高い木の高さが60m強だからだ。
京都・花脊の三本杉で62.3m(ACORN記事参照)。これを基準に、対地高度65m以上で設定すれば、日本国内のほぼ全ての森林で樹木との衝突リスクを回避できる。
50m以上の木は日本では殆ど見られないので、60m+5mがあれば誤差も含めて衝突は回避できる。
花脊の三本杉
※送電線など人工構造物がないことは事前に確認しよう。
地形追従機能の注意点
DroneLinkのTerrain Follow機能は、ESRI(世界最大のGIS企業)のWorld Elevation Servicesを使用している。日本では約5m解像度だが、実際の地形との誤差が生じる可能性がある。急峻な斜面や崖、最新の地形変化(土砂崩れ後など)では特に注意が必要。
Dronelinkのフライトプランをアップロードする
フライトプランが作成できたらそれを操作端末にアップロードする。
DronelinkでのフライトはiPhoneもしくはAndroidスマホが必須となる。
フライトプランをオフライン用にダウンロードしておくと安心だ
操作用の端末にインストールしたDronelinkアプリからフライトプランをダウンロードしておくと通信の入りにくい森林の奥地でも飛ばすことができる。
実際の飛行
飛行は以下の流れで実行する:
- 事前チェック:バッテリー、SDカード、プロペラの状態確認
- 手動離陸:安全確認後、手動で離陸し安定高度まで上昇
- 自動ミッション開始:DroneLinkが自動で撮影を実行
- 監視:異常がないか常時監視(法的義務)
- 手動着陸:ミッション完了後、手動で安全に着陸
飛行中はバッテリー残量と風の変化を常に監視し、異常時は即座に手動操縦に切り替える。
撮影条件
森林の撮影は影の影響が大きいため以下の条件が推奨される。
- 最適:曇天(影ができず、均一な明るさ)
- 次善:晴天の10:00-14:00(太陽が高く、影が短い時間帯)
- 避けるべき:朝夕(長い影が地形を隠してしまう)
また現地では離着陸場所の確保(3m×3m以上の平坦地)とGPSを受信できる電波環境の確認が必要だ。
WebODMでの処理
撮影完了後、SDカードの画像データをWebODMで処理する。重要なのは画像のメタデータ(GPS情報、撮影時刻など)が正確に記録されていることだ。
処理により以下のデータが得られる:
- 高精度3D地形モデル
- オルソモザイク画像(歪みを補正した航空写真)
- 樹高分布データ
[画像提案:完成した3Dモデルとオルソモザイク画像の例]
詳細な処理手順については「WebODM森林解析完全ガイド」で解説している。また、WebODM公式サイトでも最新の技術情報を確認できる。
今回は森林の解析を手軽にやるための事前準備と実際のフライトまでの方法を紹介した。
参考文献
以下の文献を参考にした。
特にDeepForest社はドローンを使った森林計測の分野の最先端を走る企業なので、実際のデータの分析の際は、使用することも検討されたい。